この記事はこんな方におすすめ!
・「Hz」とか「bit」とかよく見るけどアレは何?
・曲を書き出すときに出てくる「数字の組み合わせ」、どれを選べばいい?

みなさん、日々作曲・ミックスに励んでいると思います。
MIDIを打ち込み、楽器や歌を録音し、ミックスも済ませた、あとは音源データとして書き出すだけだ!
それをバウンスと言いますが、その時必ず見ることになるのがこちら。

・サンプリングレート
・ビット数
・ビットレート

さらに44,100HzHz16bitなど、普段見慣れないような数字や単位が並んでいますよね。
ぱっと見なんのことだか全然わからないし、なんとなくで選んでいる方も多いのではないでしょうか。
私もその一人でした。

しかし、意味を知れば理解はグッと深まります。
今回はこれらバウンス時に欠かせない用語を解説していきます。

【1】サンプリングレート

サンプリング周波数とも呼ばれます。
単位はHz(ヘルツ)

PC等に音源(アナログ情報)を取り入れるとデジタル情報に変換され、その処理を
「標本化(sampling)」
と呼びます。

標本化された情報はPC側の処置によって測定され、事前に設定した数に分割されます。
「1秒間に情報を何分割するかの単位」
サンプリングレートです。
数字が大きいほど情報量が増え、精度が高くなります(その分容量も増えます)。

1Hzであれば、1秒間に1回。
冒頭で少し触れた44,100Hz(44,1kHz)は、1秒間に44,100回も分割します。
音楽CDのサンプリングレートもこの値であり、実は馴染みのある数値なのです。
最も主流な設定と言えるでしょう。

【2】44,100Hzが多く使われる理由

人間の可聴域は20Hz~20,000Hzと言われています。
「なら書き出し時の設定も20,000Hzあれば十分では?」と考えるのが自然でしょう。
しかし、それだと良い音質には届かないのです。

音声情報を正しく標本化するためには、求めたい周波数の二倍の値が必要なのです。
これをサンプリング定理と呼びます。

「20,000Hzあれば良いので、バウンス時の設定は22,050Hz」にしてしまうと、実際に書き出したデータのサンプリングレートはその半分の「11,025Hz」になります。
これではかなり音質が劣化してしまいます。

これが44,100Hzであれば、書き出し後の数値は「22,050Hz」であり、十分な音質を確保することができます。

また、さらに上の48,000Hz、96,000Hzなどもありますが、前述にもあるとおり人間の可聴域は20,000Hz程度までであり、それ以上は違いがほとんどわかりません。
「なんとなくゴージャスになったかな」、程度の変化です。

以上が、44,100Hzが最も多く使われるサンプリングレートの理由です。
要するに丁度いいのです。

【3】ビット深度

量子化ビット数とも呼ばれます。
単位はbit

「サンプリングされた音声データに、どれだけ情報を与えるかを決める要素」
といった感じでしょうか。

サンプリングされたデータに対し、次は「どのくらいの精度で描写、再現するか」という処理が行われます。
8、16、24、32bitの数値があり、数字が大きいほど情報量が(容量も)増えます。

最も多く使われているのは16bitで、音楽CDの数値もこれです。
高音質、いわゆるハイレゾ音源24bit以上を採用しています。

こちらも16bit以上の数値はそこまで大きな違いが感じられません。
逆に8bitの変化は如実で、ノイズが多く含まれているのが分かります。
このノイズをうまくエフェクトとして使う手法もあります。

【4】ビットレート

単位はbps(bit per second)

1秒間に送信できるデータ量を示す単位で、数値が多いほど質が高くなります。
1bpsで1秒間に1bit送ります。
「その音声データの音質を表す最終的な数字」、といったところでしょうか。

算出方法は上記のサンプリングレートとビット深度を掛け算したもの。

例:44,100Hz×16bit=705,600bps

こちらは1チャンネル、つまりモノラルの数値なので、ステレオの場合はさらに×2をします。

705,600×2=1,411,200bps (1411kbps)

前述した通り44,100Hzと16bitは音楽CDで採用されている設定なので、一番馴染みのあるであろう数値です。
1411kbpsという文字、CDの読み込み等でなんとなく見覚えある方も多いのではないでしょうか。

【5】設定の違いによる聴き比べ

次に、サンプリングレートやビット深度の違いで音質がどう変わるか聴き比べていきましょう。
※()内の数値はステレオを想定し、×2してあります。

1. 44,100Hz × 16bit (1,411,200bps)

まず標準ともいえる44,100Hz×16bitから。
こちらの音質を起点にして、どう変わっていくかを聴いていきます。

2. 44,100Hz × 8bit (705,600bps)

ビット数が半分になった8bit
ノイズが目立ち、違いがよく分かります。特に終わりの方はかなりノイジーですね。

お世辞にも良い音とは言えませんが、あえて音質を落とすことによりローファイな雰囲気を演出する手もあります。

3. 44,100Hz × 24bit (2,116,800bps)

続いて24bit
16bitとの違いは大きく感じられませんが、気持ちキックの音がクリアになった気がします。
いま流行りのハイレゾ音源がこのbit数を採用しています。


今度はサンプリングレートとビット深度のさまざまな組み合わせを聴いていきましょう。

4. 11,025Hz × 8bit (176,400bps)

サンプリングレート、ビット数ともに設定で選べる元も低い数値。
違いは一目瞭然で、音が全体的にこもっていますし、ノイズも目立ちます。
ですが、ローファイでどこか暖かい質感は嫌いになれません。

5. 22,050 × 16bit(705,600bps)

サンプリングレートを標準の半分にした音源。
44,100Hzの物に比べ、特にキックがぼやけている印象を受けます。

6. 96,000Hz × 16bit(3,072,000bps)

7. 192,000Hz × 32bit (12,288,000bps)

最後は高サンプリングレートの音源を続けて。

7.の192,000Hz ×32bitはそれぞれ設定できる最高の数値であり、bpsも標準の9倍近く。
容量も9倍近くなっています。

ですが、やはりそれほど大きな違いは感じられません。
人間の可聴域で認識できる範囲は限界があるので、無闇に数値を大きくしても劇的な変化は起こらないのです。


特にこだわりや要望がなければ、最も多く使われている44,100Hz × 16bitで十分と思われます。

【6】最後に

以上、バウンス時の処理に関する設定・用語について解説いたしました。

・サンプリングレートは「音声情報を1秒間に何分割するか」の単位
・ビット深度は「サンプリングされた音声に与えられる情報量」の単位
・ビットレートは「1秒間に送信できるデータ量」の単位
・それぞれ数字が大きいほど精度、容量ともに上がる

・最も多く使われるサンプリングレートは「44,100Hz」
・ビット深度は「16bit」
・ビットレートは「1,4112,00bps」

・数字が大きいほど音の精密さは上がるが、劇的に変わるというほどではない
・サンプリングレートを設定する際は「サンプリング定理」に注意しよう

見慣れない数字と単位が並び、拒否反応が出てしまう方も多いかもしれません。
私も初めはなかなか頭に入って来ませんでした笑。
当記事以外にも参考書や資料を読み込んでいただき、理解を深めていただければ幸いです。

初めは難しくても、一度わかってしまえばそれは大きな強みになります。

例えば楽曲制作を依頼された時先方に「今回は全部1411kbpsでお願いします」と言われたとします。
ビットレートの知識があれば「44,100Hz×16bitにすればいいんだな」と理解でき、作業への移行もスムーズでしょう。

きちんとした知識を持っていれば、何かしらの要望を受けた時も対処しやすくなります。
そして、それは相手の信用を得ることにもつながるのです。

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