この記事はこんな方にお薦め!
・Logicで作曲をしているけど、ドラムプラグインの機能に不満
・有料ドラム音源は欲しいけど手が届かない…
・生音系の音質を強化したい!

※当記事はLogic Proユーザーを対象にしています

Logic Proでバンドサウンドなどの生音系を作曲するとき、多くの方は「Drum kit Designer」を使用されているかと思います。
デフォルトで入っており、立ち上がりが早く音色もそこそこ、とても使いやすいプラグインです。

ですが、使い慣れていくうちに物足りなさも感じてくるはず。
もっと細かい調整がしたい…
でも予算やPC性能の関係で有料プラグインは難しい…

そこで今回は、更なるクオリティを求める方に「Drum kit Designer Producer Kits」をご紹介します。
有料音源に引けを取らない、優秀な機能を持ち合わせています。

メリット

・有料音源に引けを取らない機能
・複数本のマイクセッティングを再現
・部屋鳴り、マイク・リークの調整も可能
・楽器の種類もDrum Kitに内臓されている物すべてが選択可能

現実のマイクレコーディングを意識した、よりリアルな音作りが可能になります。
マイクを複数用意した状態をシミュレートすることにより、PAN振り、リバーブ感、生音っぽさの演出をより細かく。
また、通常版では出来なかった、スネアやシンバルなどの楽器の自由な組み合わせも可能に。

デメリット・注意点

・少し複雑な仕様のため、いきなり初心者にはおすすめできない
・まずは通常版で慣らしてから

細かい設定・音作りが可能な今機能ですが、ドラムやレコーディングに対しある程度の知識が要求されます。
この記事ではそれらについても解説しているので、ぜひご覧になっていただければと思います。

【1】Producer Kitsとは?

端的に言うと、「ドラムのレコーディングブースを再現した機能」です。

ドラムセット各パーツへのマイキング、部屋鳴り、マイク・リークなど、現実のドラムレコーディングをDAW上で再現しており、非常にリアルなサウンドを作ることができます。

【2】ドラムレコーディングの流れ

Producer Kitsを使う前に、簡単にドラムレコーディングの流れを解説します。
実際の手順を知っていれば、より理解が深まると思います。

まず、ドラムセットに対し複数のマイクを設置します。

ドラムの各パーツにそれぞれマイクをセットしていくのですが、一般的な振り分けはこんな感じ。

・バスドラム:2本
・スネアドラム:2本
・タム:各1本ずつ
・ハイハット:1本
・オーバーヘッドマイク:1~2本
・ルームマイク:1本

バスドラム、スネアドラムにはマイクを2本用意するのが基本です。
バスドラムは太鼓の内部と外側(インとアウト)に、スネアドラムは打面と裏面(トップとボトム)にそれぞれ、といった形です。

引用元-Mu’s Homepage

オーバーヘッドマイク(トップマイクとも)というのは、ドラムセット全体の音を録るために、上から見下ろすように設置されたマイクのこと。
シンバル類の音もここから拾います。

引用元-ドラム博士

ルームマイクというのは、部屋全体の音響を録音するためのマイク。
ドラムからやや離れた位置に設置します。

引用元-ドラム博士

これらのマイクをMTRないしオーディオインターフェイスに繋げて録音するというのが、ドラムレコーディングの流れです。

そして、Producer Kitsはこの空間をDAWで再現してしまおうという、恐るべき機能なのです。

【3】実践!Producer Kits

では実際にProducer Kitsを立ち上げ、内訳を見ていきましょう。
ライブラリ欄から「Drum Kit」を選択、一番下の「Producer Kits」を選びます。

開くと、末尾に「+」が付いたドラムセットの名称がずらりと並んでいます。
「Old School+」のように、通常のDrum Kitでは無かった種類もありますね。

今回はその中から、エフェクト等があらかじめセッティングされていない「Unmixed+」を選びます。
まずはフラットな状態から慣れていくのが良いでしょう。

セッティングされたものを開くと、ズラリとトラックが並びます。
一つずつ見ていきましょう。

Overheads

ドラムセット全体の音を録るために、上から被せるように設置されたマイク。
クラッシュシンバル、ライドシンバルはここで打ち込みます。
太鼓やシンバルの種類変更、音色調整もここで行いますが、詳しくは【4】にて後述。

Kick in・Kick out

Inは、マイクをバスドラム表面の皮に空けた穴に入れ、ビーター(打面を打つための棒)をヒットする音を録ったもの。
outは、バスドラム全体の鳴りを録ったものです。

Snare Top・Snare Bottom

Topはスネアドラムの打面を、Bottomは裏面に響く音を録ったもの。

このように通常のDrum Kitでは不可能だった、バスドラムとスネアの細かい調整がProducer Kitsでは可能になっています。

Hi-Hat
Tom High・Mid・Low

ハイハットハイタム・ミッドタム・ロータム
こちらは通常版と大きな変わりは無し。

Room A・B

Overheadsではドラムセット全体の音を録っていましたが、こちらは名前の通り、「部屋全体の残響をマイクで録音した音」です。つまりリバーブの再現

Roomの有無で音響は大きく変わります。参考音源で比較してみましょう。

Roomあり

Roomなし

Roomなしだと音響がかなりデッドになります。
タイトな音作りがしたい場合はRoomをカットすると良いでしょう。

ちなみにAはステレオ、Bはモノラルです。用途に応じて使い分けましょう。

Leak(リーク)

日本語で「漏れ」のこと。
「マイクをセットした楽器以外の音の入り込み」の再現、といったところでしょうか。

例えば、スネアにマイクをセットしたとします。
基本的にはスネアの音が入りますが、マイクというのは余程の指向性でもない限り周囲の音を拾います
それゆえハイハットやシンバルなど、他の楽器の音も薄く入ってきます。
それを再現したのがこのLeakです。

各マイクが同じように音を拾うので、それぞれが重なり厚みが生まれます。
こちらの調整ができるのも、Producer Kitsの大きな強みの一つです。

【4】楽器の種類変更

Producer Kitsにはもう一つ嬉しい機能が。
それが楽器の種類変更・全種類選択
「Overhead」を選択し、「Drum Kit」をクリックしましょう。

スネアドラムを選びます。
するとどうでしょう、Drum Kitに内臓されているすべてのスネアが選択可能になっているではありませんか!

バスドラム、タムも同じように全種類から選べます。
また、通常版では個別の選択が不可能だったシンバル・ハイハットも可能に!
サウンドメイキングの幅が一気に広がります。
ゲームの隠しコマンドで全キャラ解禁したような感動。

また、楽器個別でのLeak、Room、Overheadsマイクのオンオフ、Room AとBの切り替えもこちらで変更できます。
スネアはステレオのRoom A、タムはモノラルのRoom B、というような芸当も可能です。

【5】手動でのセッティング方法

以上、ライブラリ欄からプリセットを選択しましたが、手動で同じようにドラムトラックを展開することもできます。

トラックを追加し「ソフトウェア音源」→「Drum Kit Designer」→「マルチ出力」を選びます。

トラックに「Inst1」が追加されます。
同時にライブラリ欄にもドラムセットの種類一覧が表示されるので、今回は「Birch Kit」を選びましょう。

ミキサー画面を開いてください。
「Birch Kit」のソロボタン(S)の上に、「-+」ボタンが表示されているはずです。
+ボタンを連続で押してみてください。先のトピックと同じように、スネアドラムやRoom等のトラックが出現します。

次に、これらをメインのトラック画面に表示させます。
「Birch Kit~Aux15」まで全て選択し、「オプション」から「選択したチャンネルストリップのトラックを作成」を選びます。

これですべてのトラックが表示されるようになりました。
あとは出現したトラックを再びすべて選択し、「右クリック」→「Track stackを作成」→「サミングスタック」を選択すれば完了です。

あとは先のトピックと同じ要領で楽器や音色を変更しましょう。

【6】注意点

このようにとても便利なProducer Kitsですが、使いこなすにはやはりある程度の慣れが必要です。

DTM初心者の方は、まずは通常のDrum Kit Designerで慣らし、ドラムの仕組みやコツを掴んでから移行した方が良いでしょう。
パラアウトなどのテクニックを先に習得しておくと楽です。

いきなりこちらから始めるのは、はっきり言っておすすめしません。

【7】最後に

以上、Producer Kitsについて解説いたしました。

・有料音源に引けを取らない機能
・複数本のマイクセッティングを再現
・部屋鳴り、マイク・リークの調整も可能
・楽器の種類もDrum Kitに内臓されている物すべてが選択可能

・少し複雑な仕様のため、いきなり初心者にはおすすめできない
・まずは通常版で慣らしてから

有料音源の購入を考えているLogicユーザーの皆さん、導入する前に一度この機能を使ってみることをおすすめします。
まずは手元にある物で、最大限の工夫をするのも良い経験になるでしょう。
それでも物足りなかったら有料音源に移行…という形でも良いと思います。

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