過去2回にわたる「UI Standard Guitar」の紹介・解説もいよいよ最後。
3回目となる今回は、「コントロールチェンジを使用したさらなる表現」について書きたいと思います。
前回ご紹介した機能だけでも十分なポテンシャルを持つ本プラグインですが、当記事ではより細かく、アドバンスドな使い方を解説します。
メリット
・拍、秒単位で音の変化を作れる
・精微な調整でよりリアルな表現へ
デメリット・注意点
・できることが多い分、相応の調整感覚が求められる
・入力するほど容量も増える
・まずは普通の打ち込みに慣れてから
収録されている音源・奏法はそのままでも十分使えるクオリティですが、コントロールチェンジを使うことで、ニュアンスをさらに拍単位・秒単位で変化させることができます。
使いこなせれば、好きなギタリストのプレイと癖を忠実再現!なんてことも可能です。
ただ、やれることの幅が大きい分、使う側にもそれなりのスキル・感覚が要求されます。
曲の進行による盛り上げ方、あるいは抑え方、ピッチ調整、ギターソロの音作り等々…
いきなり挑戦しようとするとかえって混乱するので、初心者の方は基本的な打ち込みをマスターしてから臨んだ方が良いでしょう。
【1】コントロールチェンジとは?

MIDIに信号を送り、曲の進行と共に演奏に変化をつけられる機能。略称はCC。
0から127の合計128項目それぞれに機能が割り当てられています。
代表的なものとして音量を変更するエクスプレッション(CC11)、音を伸ばすサステイン(CC64)などがあります。
近いものにオートメーションがありますが、あちらは音量、PAN、エフェクターのかけ具合を変化させることは可能でも、演奏そのものは変更できないので、厳密には別物です。
【2】コントロールチェンジの設定方法
まずはリージョンを作成、MIDIノートを打ち込みます。

ピアノロールを開いた状態でキーボードの「A」を押すと、画面下部に「オートメーション/MIDI」のポップアップが出現。

「チャンネル1:ノートベロシティ」の部分をクリックすると現れるメニューの、「MIDIコントロール 0-63」「MIDIコントロール 64-127」がコントロールチェンジの設定欄です。

ここから利用したいコントロールチェンジの種類を選択し、ポップアップ右側の空間をクリックすると線が出現。

あとはポイントを設定し、お好みで変化をつけましょう。

【3】Standard Guitarにおけるコントロールチェンジ
Standard Guitarのコントロール画面でビブラートやリリースなどを調整できますが、コントロールチェンジを入力することにより、それらを曲の進行と共に自動で変化するよう設定することができます。

コントロールチェンジで設定できる機能と、対応するCC番号を参考音源と共に見ていきます。
Dynamics (CC11)
ベロシティスイッチ(VSOP)でのみ使用。
VSOPはベロシティで奏法を変更するため、音量変化はコントロールチェンジを用います。
数値が大きいほど音量が増加。

Vib Depth (CC20)
Vib Speed (CC21)
Depthはビブラートの強さを、Speedは速さを設定。
数値が大きいほどかかり具合が増加。

Mute Time (CC22)
パームミュートの長さを設定。
数値が大きいほど音が伸びる。

Long (CC23)
「数値が117~127に設定されたとき、余韻を長く収録したサンプルが再生される」
と説明されているのですが、正直なところ違いがわからず…

Rel Shape (CC24)
MIDIノートをリリースしたときの音色を設定。
弦から指を離した時の音を再現した「リリーススタイル」が5種類と、自動で特定の動作を行う「アクションリリース」が2種類。
リリーススタイル
・02~15 Basic
・16~31 Hard
・32~47 Agressive
・48~63 Agressive2
・64~79 Position Change

アクションリリース
・自動スライドアウト
奏法がサステイン、スライドダウン、スライドアップ、プリング、ハンマリング、スライドイン、擬似レガートの時にコントロール値を80~127に設定すると、リリース音が自動的にスライドアウトになる。

・自動オルタネイト
奏法がサステインダウン、ミュートダウン、フレットミュートダウン、ブラッシングの時にコントロールチェンジ値を96~127に設定すると、リリース時にアップストロークが自動で演奏される。
つまり、オルタネイトを打ち込む手間が省ける形になります。

Rel Level (CC25)
Rel Shape (CC24)で設定したリリース音の音量を調節。
対象は「リリーススタイル」の5種類。

Interval A (CC26)
スライドアップ、スライドダウンのスライド距離を設定。
・01~15 半音
・16~31 1音
・32~47 1音半
・48~63 2音
・64~79 2音半
・80~95 3音
・96~127 3音半

Interval B (CC27)
スライドインの距離を設定。
・01~15 半音
・16~31 1音
・32~47 1音半
・48~63 2音
・64~79 2音半
・80~95 3音
・96~127 3音半

Bend Time (CC28)
自動ユニゾンチョーキングのスピードを設定。
数値が大きいほど遅くなる。

Resonance (CC29)
「低音部の共鳴量を調整」とのことですがこちらも違いがわからず…

Picking (CC30)
ピッキングノイズの音量を調整。
数値が大きいほど強くなる。

Micro (CC31)
ピックが弦に触れた瞬間の音量を調整。
数値が大きいほど強くなる。

Sus P5 (CC32)
奏法がサステインダウン、サステインアップの時に自動Magnet (CC48)で5度上の音を鳴らす。
・0~64 無効
・65~127 有効

Magnet (CC48)
ピックアップのサウンド感を調整。
数値が大きいほど高音が強調される。

Bend Start (CC52)
Bend Speed (CC53)
Startはチョーキングのスタートポイントを、Speedは早さを調整。
数値が大きいほど遅くなる。

Slide Speed (CC111)
スライドインのスピードを調整。
数値が大きいほど遅くなる。

Trill Speed (CC112)
トリルのスピードを調整。(KSOPの時のみ有効)
数値が大きいほど遅くなる。

【4】参考音源による聴き比べ
同じ演奏が、コントロールチェンジの有無によってどれだけ変わるかを聴き比べてみましょう。
CCなし
CCあり
「なし」は完全に素の音。悪くはないですが、やはり少し物足りない。
対して「あり」。ビブラート、パームミュートの長さ、ピックアップ調整など、コントロールチェンジで複数調整してみました。
特にピッキングハーモニクスのビブラートがわかりやすいのではないでしょうか。
非常に便利ですが、情報量が増えるため容量も大きくなります。
入れすぎるとDAWの動作が重くなったりするので注意しましょう。
【5】最後に

メリット
・拍、秒単位で音の変化を作れる
・精微な調整でよりリアルな表現へ
デメリット・注意点
・できることが多い分、相応の調整感覚が求められる
・入力するほど容量も増える
・まずは普通の打ち込みに慣れてから
以上、全3回に渡り「UI Standard Guitar」について解説させていただきました。
収録奏法の種類、コントロール画面で調整できる要素、コントロールチェンジを使った演奏の拡張方法など、それぞれを具体的に扱った記事や動画が見当たらないことに気づき、当シリーズを執筆するに思い至りました。
特に収録されている各奏法については、一つずつ解説している所は他に無かったように思われます。当サイトを参考にしていただければ幸いです。
操作に慣れるまではちょっと大変ですが、ハマれば非常に頼もしいStandard Guitar。
今からギターを一から始めるより、こちらを使いこなした方が確実…かも!?
シリーズ「UI Standard Guitar
【Part.1】これが無料!?ギター音源「UI Standard Guitar」解説 ~紹介・導入編~
【Part.2】これが無料!?ギター音源「UI Standard Guitar」解説 ~打ち込み実践編~